キッチンカウンターとテーブル
キッチンカウンターのあるお店が好きです。小さい頃、キッチンカウンターの奥で作業をしている店員さんを見ていたくて、ラーメン屋さんにキッチンカウンターがあると、スツールによじ登ろうとして母によくたしなめられたものでした。
海草をふんだんに使うラーメン屋さんでは、タイルを使ったカウンターテーブルの前に、貝殻を敷き詰めた間仕切りがあり、オーダーしてからラーメンが出来上がるまで退屈せず、眺めていました。今でもキッチンカウンターのお店であれば、必ずそこに座るようにしています。成人した今では、ラーメン屋さんのキッチンカウンターではなく、バーにあるカウンターのことなのですけれど。
カウンター席に一人で座る、カウンターにスツールがない、カウンターが低めのバーではバーテンダーが椅子をひいてくれる。カウンターの向こうではキッチンでフードを作る、ドリンクをシェイクする、カウンターをマメに拭いてくれますし、贅沢な気分にさせられます。
目隠しのガラスを覗き込めば照明がカウンターテーブルにちょうど置かれた感じになり、まるでビールを一列に並べたように見えるなど、ちょっとした楽しみもあります。キッチンカウンターは顔を覚えてもらいやすい席ですから、思いがけないサービスを受けることもあります。ラーメン屋さんでは調理をしている店主自らラーメンを出してくれますし、おそば屋さんでは天ぷらそばの天ぷらを揚げる音が間近で伝わります。
また、店員さんとの会話や、たまたま隣に座った人とのコミュニケーション、キッチンの中にあるお店の裏側が覗けるのもキッチンカウンターがあるお店ならではです。見知らぬ人と話がしたいとき、何か楽しい話が聞きたいとき、相手は仕事だから、とか迷惑だから、なんて思ってはいけません。キッチンカウンターは素敵な魔法がかかっていますから。